無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
美月よりも日葉里の方が忙しない毎日を送っているのに、甘えるのは申し訳ない。

「いいからいいから。忙しいのには慣れてる。今日は私が迎えに行ってお風呂とご飯も済ませておくから。別に気にしないで」

「だけど、申し訳ない――」

「いいのよ。今の美月、仕事が楽しめるようになっていい顔してる。私はそれがうれしいの」

日葉里は美月の言葉を遮りきっぱりと言う。

「いい顔……」

美月はハッと両手を顔に当てた。

 たしかにそうかもしれない。

育休を終えて職場に復帰して以来、渡英直前でイギリス赴任を辞退したことへの罪悪感を抱えながら、一部からの未婚のシングルマザーに対する厳しい視線に
耐えてきた。

それはかなりのストレスで、仕事を楽しむどころか苦しいばかりの日々だった。

小松に越してきた当初は表情も暗く、ぼんやりしていたに違いない。

それから四カ月が経ち、今では仕事や忙しい毎日を楽しめる本来の自分に戻りつつあると感じている。

日葉里から〝いい顔してる〟と言われて、その思いはいっそう強くなる。

そしてようやく、ここに異動してきたのは間違いではなかったと思えるようにもなってきた。

「今夜は美月の好物のビーフシチューをたっぷり作っておくから、仕事、がんばりなさい」

「お姉ちゃん……ありがとう。じゃあ、今日は蓮人のお迎えお願いします」

美月は日葉里の気遣いと優しさに心から感謝し、自分がどれだけ恵まれているかを改めて実感した。




週末、小松基地航空祭を翌日に控えて、カフェには前泊するファンが大勢やって来た。

明日は基地が一般開放され、ブルーインパルスの飛行展示が行われたり、Fー15戦闘機の地上展示があったり。

他にも事前予約が必要だが管制塔の見学もあるようでファンにとっては一度は参加してみたい企画が目白押し。

< 17 / 137 >

この作品をシェア

pagetop