無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
その時すでに、日々のルーティンとでもいうように毎日ホームページで碧人の姿がないかを確認するようになってから十年以上が経過していた。

その年月は、碧人が夢を叶えるために努力を続けてきた時間だ。

美月には想像できないほどの苦労を重ね、ようやくの思いで掴んだポジションだというのは簡単に想像できた。

『碧人先輩、おめでとうございます』

美月はパソコンの画面に表示された碧人の涼しげな笑顔に声をかけ、自分も碧人に負けないよう目前に迫っていたイギリス赴任を精一杯がんばらなければと思
いを強くした。

けれど結局、それからほどなくして妊娠がわかり状況が一変した。

イギリス赴任はあきらめざるを得ず、家族にも子どもの父親が誰なのかを隠し通したまま出産に臨むことになったのだ。

「そういえば……」

ブルーインパルスのパイロットとして紹介されていたページに碧人の略歴が記載されていたのを思い出した。

松島基地に赴任する前の所属が小松基地と記されていた気がする。

だとすれば、休日にはこの辺りに足を運んでいたかもしれない。

まさかと思いながらも胸がざわめくのを感じた時、バイトのひとりが美月の横を通り過ぎ今日最後のシフォンケーキを客のもとに届けた。

「写真よりかわいいっ」

大学生だろうか、三人の女の子たちがシフォンケーキにスマホを向けて熱心に写真を撮り始めた。

チョコペンで描かれたイーグルは、大きな羽根を広げ鋭い目でなにかを見つめている。

おまけにシフォンケーキを囲むたっぷりの生クリームと新鮮なフルーツに彩られたプレートはとても豪華で見た目も抜群。

SNSで話題になるのもよくわかる。

「イーグルか……」

写真でしか見ていないが、戦闘機というだけあって存在感の大きさを感じた記憶がある。

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