無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「え……?」

美月は最後に店に入ってきた男性の顔を見て、目を見開いた。

幻だろうか、碧人が店の入口に飾っているカボチャのランプを眺めているのだ。

「どうしてっ」

あまりの驚きに持ち上げようとしていたトレイが手から滑り落ち、食器がぶつかる音が店内に響いた。

「すみませんっ」

美月は慌ててトレイを持ち直し、周囲に頭を下げた。

「大丈夫か?」

「は、はい。大丈夫です。ちょっと手が滑っただけで」

美月は曖昧に答える。

突然のことに鼓動が一気に跳ね上がり、呼吸もうまくできない。トレイを手にうつむき、どうしようかとオロオロするばかりだ。

「美月?」

 美月は身体を震わせた。この声は間違いない、碧人の声だ。高校時代、そう呼びすてられるたびにドキドキしてどうしようもなかった。

「美月、だよな」

続く確信に満ちた声に、美月はうつむいていた顔をおずおずと上げた。

「……碧人先輩」

やはり碧人だ。長身で手足が長いのは以前のままだが、訓練で鍛えられた身体はジーンズに薄手のニット越しでもあの頃より逞しくなっているのがわかる。

それでも切れ長の大きな目も赤く薄い唇もあの頃のまま。すっと引き締まった顎の形も変わっていない。

十六歳の時に封印したはずの恋心が、あっという間に胸の奥から蘇ってくる。

「え、なんで美月、ここに?」

驚いているのは碧人も同じ。目を見開き信じられないとばかりに美月を見つめている。

「あの……」

美月は突然のことにどう答えていいのかわからず口ごもる。

二度と会うことなどないと思っていた、そして誰よりも会いたいと思っている相手が目の前に現われた。

こんな時、どうすればいいのかわからない。

「イギリスから帰ってきたのか?」

「えっと、それは、あの……」

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