無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
幸せそうな笑顔で美月を見上げる蓮人は、やはり碧人にそっくりだ。

今碧人を目の前にして、強く実感した。

「美月?」

碧人の訝かしげな声に、美月は身体を震わせた。

ここで蓮人の存在を知られて碧人を困らせるわけにはいかない。

たとえ碧人が蓮人の父親だとしても、碧人は今美月と蓮人とは関わりのない別の人生を送っているのだ。

それはラストフライトの時に花束を持って現われた女性とともに歩んでいるはずの、幸せな人生だ。

航空自衛官としても輝かしい実績を残している碧人の邪魔をしたり、重荷になったりするようなことはできない。

美月は蓮人を抱きしめながら、碧人にどう説明すればいいのかと思いを巡らせた。 

すると岡崎がしゃがみ込んで蓮人に話しかけた。

「れん君、ママのお仕事が終わったから、お片付けしようか」

なにかを察してくれたのか、岡崎は蓮人の頭を撫でながら美月に目配せした。

「このかぼちゃの絵もお店に飾っていいかな?」

「いいよっ」

岡崎の言葉に、蓮人は飛び起きるように美月の身体から離れた。

「見て。かぼちゃいっぱい」

蓮人はスケッチブックを岡崎に勢いよく差し出した。

「上手だね。どれにするか選んで飾っておくから、れん君はお片付けしようか。ママも手伝ってくれるって」

「わかった。ママ、早くー」

蓮人は今まで美月を待っていたテーブルに一目散に戻って行く。

岡崎に絵を褒められたのがよほどうれしいようだ。

「お客様のご案内は僕が引き受けるから。ほら、れん君が待ってるよ。今日はお疲れ様」

「は、はい。お疲れ様でした」

いつの間にか美月と碧人の間に立っていた岡崎に急かされ、美月は反射的にうなずいた。

岡崎の向こうから顔を覗かせた碧人と目が合い本当にこれでいいのかと一瞬躊躇したが、今はどんな顔をして会えばいいのかわからない。

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