無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
蓮人のことを思い出して、美月は両手で口を押さえた。

前回店に来た時、蓮人の顔を見たのかもしれない。

「私は、あの、今から予定があって」

今日は保育園で知り合ったママ友が蓮人を預かってくれていて、今から迎えにいくのだ。

「だったら美月の都合に合わせてまた出直してもいいか? 俺もずっとこっちにいるわけじゃないが――」

「ただいまー。ママ、見てー」

その時、通りの向こうから蓮人の声が聞こえてきた。

慌てて顔を向けると、蓮人が一目散に走ってくる。

「蓮人? え、どうしたの」

「きれいな石、ママにあげるー」

蓮人は美月の身体にぶつかるように飛び込んでくると、手にしていた小石を差し出した。

「公園で見つけた。ママにあげる」

「あ……ありがとう」

白く艶のある小石と蓮人を交互に見やりながら、美月は笑顔を向けた。

「公園で遊んだの?」

「そうなの。穂花が公園で遊びたいってうるさくて。れん君に付き合ってもらったの」

「早紀さん、今日はすみません」

蓮人に続いてやってきた女性に、美月は頭を下げる。

今日蓮人を預かってもらった市川早紀だ。彼女も美月と同じシングルマザーで、蓮人と同い年の女の子と小学生の男の子を育てている。

 会社を経営していて忙しく、美月が彼女の子ども達を預かることもあるが、来年再婚することが決まっていて今はとても幸せそうだ。

「ちょうどママのお仕事が終わる頃だから迎えに行こうってことになって来たんだけど。遠慮した方がよかった?」

早紀は控え目ながらも興味津々な視線を碧人に向ける。

美月が男性と一緒にいることなど今までなかったので驚いているのだ。

「そんなこと、全然。えっと、この人は……わ、私の高校時代の先輩で――」

「さっく?」

「え?」

突然響いた大きな声に視線を下ろすと、蓮人が大きな目をさらに開いて碧人を見つめている。

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