無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「さっく? ママ、さっく?」

碧人から目を逸らさず、蓮人はうれしそうな声をあげる。

「えっと、そ、そうだね……さっく、だね」

美月はオロオロと口ごもる。

もしも碧人が店に現われたらと考えて蓮人を早紀に預けたが、まさかこうしてかち合うとは想定外だ。

「サックって?」

早紀が娘の穂花を抱き上げながら、きょとんとする。

小松で暮らしていても基地に興味がなくブルーインパルスについても知識ゼロだと言っていたからそれも当然だ。

「さっくは、ブルーで飛ぶの」

「ブルー? ああ、いつも見てるブルーインパルスね」

なぜか誇らしげに話す蓮人に、早紀は納得する。

「だったら彼はブルーインパルスに乗ってる人?」

「うん。ね、ママ」

「う、うん。そうだね……」

碧人の戸惑いを視界の隅で感じながら、美月は気まずげに答えた。

蓮人の言葉を碧人がどう受け止めたのか、考えるだけで怖くて顔を見ることができない。

「そっか。れん君がブルーインパルスに夢中なのは、こういうことだったのね。だったら私はお邪魔みたいだからここで。じゃあ、れん君、明日保育園でね」

「早紀さんっ。邪魔じゃないです」

「いいのいいの。またねー」

早紀はわかっているとばかりにニヤリと笑いさっさと今来た道を戻り帰っていった。

蓮人を預かってもらったうえにここまで送り届けてもらったというのにお礼すら言えず、おまけに碧人のことを誤解されてしまった。

「美月、今の話って」

蓮人や早紀とのやり取りを見守っていた碧人が、ポツリとつぶやいた。

「すみません……えっと。彼女は蓮人の保育園のママ友で……あ、いえ」

どこまで蓮人について碧人に話すべきなのかわからず、言葉を濁した。

それにまだ、蓮人が碧人の子どもだと知られたわけじゃない。

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