無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「サックって、俺のことだよな。それにブルーインパルスをいつも見てるって、まさか」

碧人は目を開き膝をつくと、まるでなにかを探し出すように蓮人の顔をまじまじと見つめた。

「あ、あの。実はブルーインパルスで活躍してる碧人先輩をSNSとか雑誌で見ているから、蓮人、碧人先輩の顔を覚えていて」

「やっぱり、似てる。この間も思ったけど、俺の子どもの頃にそっくりなんだよ」

「違います」

美月は慌てて手を伸ばし蓮人を抱き寄せようとするが、蓮人はその手をすり抜け碧人の周りをぐるぐる走り回る。

「さっくっ。さっくがきたー」

蓮人は目の前に大好きなサックが現われて興奮しているのか、手を叩き飛び跳ねる。

「ブルーは? キューピットは?」

「キューピットって、ハートの?」

碧人は戸惑いがちに美月を見上げる。

「はい……」

美月はぎこちなくうなずいた。

蓮人はブルーインパルスの課目の中でもキューピットが一番のお気に入りなのだ。

「蓮人くん……でいいのか?」

碧人の微かに震える声に、美月は一瞬息を止め迷ったものの、静かにうなずいた。

「蓮人くん……ブルーインパルスが好きなのか?」

相変わらずテンション高めで落ち着かない蓮人に、碧人は硬い声で尋ねた。

「うんっ。好き。ママもブルーが好き」

はしゃぐ蓮人の声に碧人の表情がぐっと引き締まり、美月は軽く唇をかみしめる。

「そう。ママも好きなのか。でも、残念だけどサックは今ブルーインパルスには乗ってないんだよ」

「ない……?」

碧人の言葉が理解できないのか、蓮人は動きを止め小さく首をかしげた。

「今、サックは別の飛行機に乗ってるんだ。イーグルって知ってる?」

碧人は蓮人にゆっくりと説明する。

けれどまだ三歳にもならない蓮人に理解できるわけもなく、きょとんとするばかり。

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