無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
トクトクと大きな音を立てる心臓の音を、意識しながら。




「仕事終わりに申し訳ない。疲れてるよな」

テーブルについた美月に、碧人が声をかける。

ぎこちなさが滲む声。

碧人が緊張しているのがわかる。

「大丈夫です。それより、あの。ここにはどうして」

そう尋ねたものの、理由はわかっている。

この間ここで美月を見かけて気になっていたのだろう。

蓮人の存在にも気づいていれば、なおさらだ。

蓮人は美月の隣でブルーインパルスの特集記事が載っているお気に入りの雑誌を眺め、ニコニコしている。

「碧人先輩?」

碧人に向かいの席から強い視線で見つめられて、美月は居心地の悪さに視線を泳がせた。

「ごめん。美月がここにいることが信じられないんだ。これが現実なのか、正直混乱してる」

碧人は美月から目を逸らさず、かみしめるようにつぶやいた。

「それは、私も」

あの日碧人がカフェに訪れた日から今日まで、もしも碧人が来ても顔を合わせないように、厨房に引っ込んでいることが多かったが、心の中では碧人が来るの
を待っていた。

けれど結局碧人は現われず、これまでと変わらない蓮人との日常が変わりなく続いた。

あの日碧人が来たのは夢の中の出来事だったのかもしれない。それとも碧人に会いたいという美月の願望が見せた幻だったのだろうか。

そう思わずにはいられなかった。

今も目の前に碧人がいるというのにこれが現実だと完全には信じられず、もしも夢なら醒めないでほしいと心の中で繰り返している。

「あーっ」

 蓮人の大きな声に顔を向けると、蓮人が眺めていた雑誌がテーブルの下に落ちていた。

 すると碧人が素早くそれを拾い上げ、蓮人の手もとに置いた。

「結構、読み込んでるんだな」

 碧人は驚きつつも照れくさそうに笑い、蓮人が小さな手でページをめくるのを見ている。

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