無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「蓮人が気に入っていて。それに子どもだからきれいなままってわけにはいかなくて」

雑誌は蓮人が何度も読み返しているせいで、かなり傷んでいる。おまけに今みたいに落としたり踏んだりして、全体的にしわも多く破れているページもある。

今も開いたページの半分がビリビリと破れ、お茶がこぼれた名残の皺も目立っている。

あの時は蓮人が大泣きして大変だった。

美月はよれよれのページを眺めながら、これは夢でなく現実だとようやく実感した。

「これ、さっく」

蓮人は碧人のラストフライトの時の写真をうれしそうに指差した。

上空での飛行演技はもちろん、降機した碧人が他の隊員たちとホッとした様子で笑い合っている姿。花束を贈られている写真も載っている。

美月はその写真を目にした途端、これは夢でなく現実だと改めて思い知る。

碧人には人生の節目となる大切な日に花束を贈ってくれる、特別な人がいるのだ。

満ち足りた笑顔でハグし合う、素敵な関係の女性が。

きっと、恋人か妻。

蓮人の手に結婚指輪はないが、仕事柄身に着けられないのかもしれない。

どちらにしても碧人は今、美月以外の人と美月には手の届かない場所で生きている。

それが碧人の、そして美月も受け入れるべき現実だ。

「お待たせしました」

ふと会話が途切れたタイミングで、岡崎が飲み物を運んできた。

「コーヒーですが、よかったらどうぞ」

岡崎は碧人の手もとにコーヒーを置き、美月の前にコーヒーとホッとミルクを並べた。

「れん君が好きな蜂蜜を少し入れておいた。ぬるめだから、すぐに飲んで大丈夫」

「ありがとうございます。気を使ってもらってすみません」

「いいんだ。それよりもしもなにかあれば、すぐに……いや」

「岡崎さん?」

含みのある岡崎の声に、美月は首をかしげた。

「いいんだ。……じゃあ、ごゆっくり」

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