無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
岡崎は美月に笑顔を向け蓮人の頭を優しくなでると、碧人に軽く頭を下げ厨房に戻っていった。

「今の人って?」

「この店の店長の岡崎さんです」

心なしか硬い碧人の声に、美月は首をかしげ答えた。

「岡崎さんがどうかしましたか?」

「いや、なにも。ただ、仲がいいんだなと思って。もしかして彼って美月の……」

「上司です」

「上司?」

美月はコクリとうなずいた。

「岡崎さんはもともと入社した時の教育担当なんです。偶然ふたりともここに異動してきて。蓮人のことも可愛がってくれるのでありがたいです」

蓮人に関しては、バイトのみんなも可愛がり甘やかせてくれるので、感謝している。

「入社以来……か、長い付き合いなんだな」

碧人が淡々とつぶやいた。

「十年以上になりますね。岡崎さんはこの店以外にもいくつか店を任されているやり手なんです。色々勉強させてもらってます」

「そうか」

碧人はわずかに眉を寄せた。

「碧人先輩?」

「なんでもない。だったら彼とは……え、ありさかれんと?」

「碧人先輩?」

訝かしげな声に、美月は碧人の視線を追った。

「蓮人君の名字、有坂なのか?」

見ると碧人は蓮人の手もとにある小ぶりのタオルに刺繍された〝ありさかれんと〟いう文字を見つめている。

「はい。そうですけど、それがなにか……あっ」

美月は碧人の言葉の意味を察し、慌てて首を横に振る。

「結婚は……していないんだな?」

それを確信しているとでもいうような碧人の落ち着いた声に、美月はなにも言えず視線を泳がせた。

これでは肯定したも同然だ。

いまさら遅いが蓮人の名字が有坂だと知られた時点で、離婚をしたとでも言ってごまかせばよかった。

「じゃあ、蓮人君の父親って」

「それは、あの」

正直に答えるわけにはいかず、美月は言い淀む。

「美月」

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