無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「高校時代、俺のせいでバレリーナになる夢をあきらめて、イギリス赴任もあきらめたんだな。また俺のせいで」

「ちが――」

「本当に申し訳ない」

碧人は姿勢を正し、深く頭を下げる。

思いつめたような声と小刻みに震える肩。

この姿、美月には見覚えがある。

碧人と付き合っていることをやっかんだ女の子に突き飛ばされて階段を転げ落ちた、高校生の時だ。

その時足を骨折したせいで一カ月後に控えていた世界的なバレエコンクールへの出場をあきらめざるを得ないだけでなく、たとえ骨折が治癒しても、以前のようにはもう踊れなくなった。

それを知った時、碧人はひどく落ち込み自分を責めていた。

「碧人先輩、気にしないでください。もしもバレエを続けていても私の実力じゃバレリーナにはなれなかったはずだし、イギリス赴任も望めばこの先チャンスは
あります」

美月は力を込めて言葉を続けた。

たしかにあの時は碧人を好きだという女の子のせいで大けがをし、イギリスのバレエ団で踊るという夢をあきらめなければならなかった。

でもそれは、碧人のせいじゃない。

ある意味碧人も犠牲者だ。

それがわかっていても、その事件は学校中に広まってしまい、周囲からの好奇の目に耐えられなくなった美月の方から、碧人に別れを告げた。

精一杯美月を支えようとしてくれていた碧人の気持ちを汲む余裕もないままに。

責任を感じていた碧人には美月の決断を受け入れることしかできず、その結果。

ふたりの付き合いは、たった四カ月で終わりを迎えたのだ。

その選択が正しかったのかどうか、美月は悩み続けてきた。

自分が強ければ、逃げ出すことなく碧人とふたりで生きる未来を見つけられたかもしれない。

どれだけの月日を経ても絶えず自問し、碧人を忘れたことはなかった。

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