無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
そのせいで今まで付き合った男性は碧人ひとり。他の誰も知らないまま大人になり、蓮人を出産した。

そして今、碧人は美月のことで再び心を痛め、肩を震わせている。

美月はたまらず首を横に振り、口を開いた。

「ここでの任期が終わって本社に戻ったら、赴任のチャンスはあるんです。それに、さっきも言いましたけど、ここの仕事は私に合ってるみたいで充実してるん
です。バイトの子とか常連さん達からパワーをもらえて元気になるし」

表情が消えた碧人に、美月は言葉を重ねた。

「イギリスのバレエ団で踊るという夢がなくなって、代わりにイギリスで仕事ができたらと思って商社に入社したのはたしかですけど。私、今幸せなんですよ。
碧人先輩が気にすることなんてないんです」

それは強がりじゃなく、本心だ。

蓮人とふたりで小松に移ってからは、その気持ちはいっそう強くなった。

任期の二年を延ばせないかと考えることもある。

「だけど」

碧人は苦しげに眉を寄せ、口を開く。

「俺が美月のチャンスを二度も奪ったのは事実だ。人生を変えてしまったこと、本当に、ごめん」

「碧人先輩……」

碧人はこういう人だったと思い出した。

大切な人を守ろうとする気持ちは人一倍強くて、美月のことも心から愛してくれていた。

だからこそ美月が怪我を負った時、思いつめた声で何度も謝り、自分を責めて肩を震わせていたのだ。

そんな碧人の責任感の強さと優しさが大好きだったと、美月は思い出した。

そしてその気持ちは今も同じ。

碧人のことが、今も変わらず大好きだ。

「さっく? これどうぞ」

ふたりのやりとりをきょとんとしながら見ていた蓮斗が、手もとにあった絵本を碧人に差し出した。

「ひこうきがいっぱい」

子どもながらに碧人の落ち込みを感じて慰めようとしているのか、精一杯手を伸ばして碧人に絵本を近づけている。

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