無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「休日はどうせ暇だろうって呼び出されてふたりの面倒を押しつけられることもしょっちゅうだったし。こっちに来てからはさすがに無理だけど、それはそれで寂しいかな。向こうも今は夫婦ふたりでなんとかやってるみたいだけど」

「夫婦……」

碧人の口から出たその言葉に美月は小さく肩を揺らした。

「あ、あの」

話の流れに力を借りて、美月は思い切って口を開く。

「碧人先輩は、今まで、あの、結婚は……?」

「結婚?」

碧人はきょとんとする。

「してない。今まで考えたこともない……え? 俺が結婚しているとでも思ってるのか?」

「い、いえ、そういうわけじゃ」

顔色を変えた碧人に、美月は目の前で手を横に振る。この反応は予想していなかった。

「そうじゃないんです。でも、結婚していたり恋人がいたりしたら、私も蓮人も碧人先輩の邪魔に――」

「邪魔ってなにを言い出して、それに俺は――」

「ままー、バスがいるー」

蓮人が大通りを連なって走る観光バスを指差し声をあげた。乗り物図鑑でよく眺めているバスを目にして大喜びだ。

「本当だね。あ、またあっちから来るよ」

碧人の言葉の続きが気になるが、身を乗り出して手を叩いている蓮人に、碧人もそれどころではなさそうだ。蓮人が落ちないよう必死で抱きしめている。

「いっぱい……」

バスだけでなくタクシーやトラックが次々と登場し、蓮人の目はキラキラしている。

「今度は一緒にバスに乗ろうか」

碧人はそう言って、蓮人と一緒にバスや自動車を目で追いかける。ふたり揃って頭を右から左に動かす仕草が妙におかしくて、美月は傍らでクスリと笑った。



「よかったらうちに来ないか? 遅くなる前に家に送るから」

公園近くのファミレスで昼食を終えて車に乗り込んだ時、碧人がそう切り出した。

「え、でも……」 

< 60 / 137 >

この作品をシェア

pagetop