無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
美月は開いたままの雑誌をチラリと見る。

この日、実は蓮人とふたりでここにいたと、伝えた方がいいのだろうか。

「いいんだ。今こうして一緒にいられるのも奇跡に近いのに、それ以上望むのは贅沢だ」

蓮人は自分に言い聞かせるようにそう言って、美月にうなずいて見せた。

「蓮人と一緒にいられる。そのことに感謝しないとな。俺の息子をここまで育ててくれた美月にももちろん感謝してる」

「碧人先輩」

「せっかくの奇跡を無駄にしたくない。だから一緒に暮らしたいんだ」

蓮人は力強い声でそう告げた。

「……はい」

やっぱりそうだったと、美月はそっと肩を落とした。

碧人が一緒に暮らしたいと言い出した理由は蓮人。

蓮人と一緒にいたくて同居を思いついた、そういうことだ。

わざわざ花束を持ってラストフライトに駆けつける恋人がいるにもかかわらず美月との同居を選んだのは、すべて蓮人の存在があったから。

それにいきなり子どもの存在が発覚した自分の不確定な将来に、大切な恋人を巻き込んで苦労をさせたくないと考えたのかもしれない。

昔から責任感が強い碧人のことだ、自身の子どもを産み育てている美月を放っておくこともできないはず。

恋人と美月の幸せを考え、悩んだに違いない。

そして、出した結論が美月と蓮人と一緒に暮らすこと。

そう考えればすべての辻褄が合うような気がする。 

「美月? 疲れてる?」

「え、いえ、大丈夫です」

美月は碧人の声に我に返り、開いたままの雑誌を意味なく手に取った。

碧人が同居を望む理由にたどり着いた動揺で、微かに手が震えている。

「わ、私、この木島忍さんというカメラマンの名前をよく見かけるんですけど、ブルーインパルスの専属かなにかですか?」

平静を意識するものの声は震え、うまく笑えているのかもわからない。

「専属ってわけじゃないが」

< 64 / 137 >

この作品をシェア

pagetop