無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
それまでの落ち着いた表情を消し、碧人は硬い声で答えた。 

「碧人先輩?」

「ああ、なんでもない。ただ、木島さんは出版社勤務の航空写真が得意なカメラマン。ここ何年かは航空自衛隊に関わる出版物の写真を手がけていて、ブルーインパルスのイベントの時にはよく顔を見るかな」

「そうなんですか」

美月は淡々と報告書を読み上げるような碧人の口調に違和感を覚えつつ、納得する。

「だからいつもこんなに素敵な写真を撮るんですね。雑誌とか写真集で木島さんの名前をよく見ます」

彼が撮ったブルーインパルスやパイロットへの愛情が滲み出るような写真を、今まで何度も目にしている。きっと本人も愛情溢れる素敵な男性なのだろう。

「それより」

碧人は美月の手からそっと写真集を取り上げローテーブルに戻すと、さらに美月と距離を詰め身体を寄せた。

握りこぶしひとつ分もなさそうな近すぎる距離。互いの体温すら感じられそうだ。

美月はラグの上で慌てて姿勢を正し、視線を泳がせた。

ただでさえこうしてふたりで過ごすのは再会して以来初めてなのに、ここまで近いとどこを見ていいのかもわからない。

背後のソファからは相変わらず気持ちよさそうに眠っている蓮人の寝息。

今すぐ起きてほしいと、普段は絶対に思わないことを願ってしまう。

「急かすつもりはなかったし、いつまででも待つつもりでいたが」

「はい」

落ち着いた碧人の声に、美月は顔を向けた。

「それにまだ再会してから今日で会うのも二回目。それはわかっているが、一緒に暮らしたい。今日一日、ずっとそう考えていたんだ」

迷いのない碧人の声がリビングに響く。

美月は息を止め、唇をかみしめた。

美月の答えを待ち続ける碧人の葛藤が伝わってきて、胸が痛い。

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