パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 そんな彼の優しさに、彼への好意があふれてしまう。

 今だけ。少しだけ。
 私はそう自分に言い聞かせ、そっと口を開いた。

「すみません、お願いします」

 カートに乗った瑞月は、優しい笑みの伊澄さんにすっかり気を許したよう。楽しそうに、色々と話をしていた。

「ほかぜみづき、さんさいだよ。おじさんは?」
「俺は三十二。空賀伊澄っていうんだ」
「いすみ! いすみはなにしてるひと?」
「飛行機に乗ってるんだ。戦闘機って、分かるかな?」
「しってる!」

 そんなふたりの会話を、私は複雑な気持ちで聞いていた。
 ふたりが仲良くなってはダメだと思うのに、つい微笑ましく感じてしまう。

 やがて買い物を終え、スーパーを出る。エコバッグを肩にかけ、子どもたちと両手をつなぎ、伊澄さんに頭を下げた。

「本当にありがとうございました」
「いや、手伝えてよかったよ」

 伊澄さんは優しく私に微笑む。不覚にも胸が高鳴ってしまい、私は慌ててもう一度彼に頭を下げ、踵を返した。
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