パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
「キッスミー、ベイベー」

 曲の途中で、伊澄さんが小さく口ずさんだ。
 その声にはっと息をのみ、彼を見る。伊澄さんは穏やかな笑顔で、ステアリングを握っていた。

 ――同じだ。
 懐かしい光景が脳裏に押し寄せた。あの時は、私の膝の上で伊澄ジュニアを踊らせていた。
 今は後部座席で、子どもたちがケラケラ笑っている。

 こんな未来が来ることを、望んでいた。それが皮肉にも、今叶ってしまうなんて。

 思い出してはダメだ。
 私は俯き、複雑な胸の内を吐き出すようにため息をこぼした。

「どうした? 車酔い?」

 伊澄さんは私の変化に気づいたようだ。どうして彼は、こんなに聡いのだろう。

「いえ、大丈夫です」

 私は彼の顔を見ることができなくて、言いながら窓の外を眺めた。

 ロックンロールと子どもたちの笑い声が響く車内で、私はひとり必死に懐かしさを振り切ろうとしていた。
 今日で、彼と会うのは最後だ。
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