パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 彼女が空を飛ぶことに憧れていると知り、ついかっこつけて『空を独り占めしている気分』だなんて口走ってしまった。

 本当は、空の上では孤独だ。
 戦闘機は、ひとりで操縦することの方が多い。仲間と編隊を組んで飛ぶけれど、それでも自分の運命はすべて自分の握る操縦桿にかかっているのだ。

 しかも、ブルーは失敗など許されない。国民の夢と希望を運ぶ責任感が、重くのしかかる任務でもある。
 しかし、キラキラした目で空を見上げる彼女にそんなことを言えるわけがない。なんとなく彼女を忘れられないまま、松島に戻った。

 小松で彼女と再会したその日、伊澄は落ち込んでいた。

 イーグルライダーになってから、二年でドルフィンライダーに抜擢されたのだから、それなりに腕は立つと思っていた。
 しかし、飛行教導隊であるアグレッサーとの模擬戦では、全く刃が立たない。

 実際の空中戦では、ブルーで磨いた美しいフライト技術だけでは〝勝ち〟にいけないのだ。伊澄には、圧倒的に経験が足りなかった。

 ――悔しい。
 だけど、誰かに当たる事などできなかった。伊澄は、心の奥を吐き出すのが苦手だったのだ。
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