パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 幼い頃から父母の仲があまり良くなく、へらへらした父とそれに呆れる母を見て育った。
 優しく、笑顔で振る舞う。本心を押し込め、強かに世渡りする母を立派だと思い、自分もそうして生きてきた。

 伊澄はタックネームの通り王子様然に振る舞いながら、基地を後にした。

 しかしその日、伊澄は真っ直ぐ帰る気になれなかった。このまま横になり目を瞑ると、今日のことを夢に見て立ち直れなくなる気がした。

 車を自宅と反対方向へ走らせる。小松空港を通り過ぎたところで、体育館のような建物が目に入った。

「航空博物館……」

 看板にあった名称を呟いた時、航空祭で出会った彼女の顔が思い浮かんだ。

 戦闘機乗りを辞めたら、民間機のパイロットになるのもいいかもしれない。彼女の好きな飛行機に、彼女を乗せるのはどうだろう。
 伊澄は自虐的で半ば本気な想いを抱えながら、そこに足を踏み入れた。

 千愛里と無事再会し、彼女と色々な航空機を見て回りながら、彼女の好きな機体を聞き出そうと口を開いた。

『君が乗るなら、どれに乗りたい?』

 なのに、彼女はキラキラした瞳でこう答えた。

『やっぱり、戦闘機ですかね』
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