パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
「キッスミー、ベイベー」
「ちゅっちゅ、べーべー」

 伊澄さんの歌声を、子どもたちが真似して歌う。それで、子どもたちは余計に笑い出す。

「いいよな、こういうの」

 不意に伊澄さんがそう言って、こちらをちらりと見た。

「水族館の時も、実は思ってたんだ。この曲で、家族で笑い合ってる。あの頃夢見た、幸せに近づけてるんだって」

 そう言う伊澄さんは本当に嬉しそうで、私もあの頃を思い出す。
 あの日手に入れることを諦めた、未来がすぐそこにある。なのに今は、その未来が来ることがちょっと怖い。

 そう思ってしまい、私は小さく頭を振った。

「どうした?」
「なんでもないです。色々なことがあったから、疲れてるのかもしれません」

 慌てて笑みを浮かべそう言うと、伊澄さんはロックンロールの音を小さくしたうえ、子どもたちが静かになるように彼らとお話してくれた。

「ここ、俺の家だ」

 団地のような白い低層マンションの並ぶ場所の横を通った時、伊澄さんがそう言った。

「これ、ぜんぶ?」
「まさか!」

 そんな瑞月と伊澄さんの微笑ましい会話を聞きながら、私は気持ちを入れ替えるよう深呼吸した。
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