パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 再会し、やっと手に入れた。
 もしも彼女が戦闘機パイロットである自分に不安を感じるというのなら、ウィングマークを捨ててもいい。
 自分の誇りを捨ててでも、千愛里のそばにいたい。

 伊澄はそう思いながら、【仕事終わりに、いつものカフェで】と彼女に返した。


 アラート待機に戻り、伊澄は気持ちを切り替え清水と談笑していた。
 しかし、整備員としてここにいる楠木がこちらに睨むような視線を送っていることを気にしていた。彼女は夜間から、アラート要員として呼ばれたらしい。

 彼女は自分に恋心がある。それを知っているからこそ、話しかけられなかった。

 この間も再度の告白を受け、フッたばかりだ。下手に話しかけてこじらせては、任務に支障が出るかもしれない。
 彼女はそんなことで整備に手を抜いたり、ミスをするような人員ではないけれど。

 恋をするのは、ややこしい。
 楠木とのことをどうしようか考えてそう思ったのに、頭によぎるのは千愛里とのことだった。

 今までは思っていただけで幸せだった。だけど、手に届く範囲にいてくれる幸せと、手の届く範囲にいるのに手を差し伸べられないこともあるという相反する事実に、自分の仕事の特殊性を感じて嫌になる。

 ため息をこぼしそうになったその時、けたたましい音が待機小屋に響いた。スクランブルだ。
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