パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
「空賀三佐、ありがとうございました」

 戦闘機を降りデブリーフィングを終えた後、清水が駆け寄ってきた。

「死ぬところでした。機体もろとも」
「空間識失調はベテランでもなり得る。感謝する暇があるなら、今日のフライトを振り返れ」
「はい」

 自分の言葉に素直に頷き、駆けてゆく清水の背を見て、伊澄はこぶしを握った。

 自分に憧れているといった若者が、死ぬかもしれなかった。その事実に、戦闘機パイロットの危険性を嫌でも感じてしまう。

 なんとなく戦闘機が見たくなって、伊澄は格納庫にやってきた。先ほどまで自分の乗っていたFー15に手を置き、その翼を見上げる。

 こうして見ると、とても小さく、頼りなく見えてしまう。

 千愛里のために飛ぶ翼。だけど今、千愛里のそばにいるためには必要ないのかもしれない。

「機体チェックするので、どいてくれますか?」

 はっとして振り返る。楠木が立っていた。

「すまない」

 伊澄はそっと、その場から一歩下がる。しかし彼女が操縦席にかけたはしごを登っていくのを、つい目で追ってしまう。
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