パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 ディスパッチャーとパイロットはフライト中も交信しているから、私のメモなんて些細なものだ。実際、別のキャプテンには捨てられることもある。

 それでも、空を飛ぶ彼らが安全で快適に乗客を目的地まで送り届けて欲しいという願いを込めて、私は続けている。

「千愛里ちゃん、そろそろ羽田に来ない?」

 丸部キャプテンはタブレット端末を操作する手を止めると、私に言った。

「君なら、ディスパッチャーをやる器量も技術もあると思うけれど」

 またか、と私は内心ため息をこぼした。

 丸部キャプテンは、ことあるごとに私を羽田に誘ってくる。羽田でディスパッチャーになって欲しいと言うのだ。
 だけど、ディスパッチャーは国家資格であるし、簡単になれるものではない。

「もちろん、補佐のままでもいい。君のデータ収集力があれば、ディスパッチャーも助かると思うよ。空港内に保育所もあるし、羽田行き、まだ考えられない?」

 笑顔を近づけられ、どきりと胸が鳴った。
 似ていないはずの彼を想起してしまうのは、こんなに顔を近づけてくる男性が彼だけだからかもしれない。
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