シンママ派遣社員とITコンサルの美味しい関係

第十話「プロジェクトの打ち上げ」

 スタイルコネクトのプロジェクトが無事に終了した。
 美咲がデスクで資料整理をしていると、部長の鷲尾がゆっくりと近づいてきた。

「佐伯さん、ちょっといい」

「はい?」

「今週の金曜日にプロジェクトの打ち上げをしたいのだが、カフェテリアを予約して欲しい」

 会社の飲み会は、外でなく社内のカフェテリアで行われるのが通例だった。
 美咲はすぐにスケジュール帳を開き、メモを取る。

「参加者は、プロジェクトメンバーと佐伯さん、君もできたら参加してほしい。それから、エマージングテクノロジー部の瀬尾君と浜田さんにも声をかけてくれ」

「浜田さんもですか?」

 思わず聞き返したが、鷲尾は気にする様子もなく「うん、頼むよ」と言い残して自席へ戻っていった。
――瀬尾さんは当然としても……浜田さん、このプロジェクトには何もしてないのよね。でも、まあいいか。私が気にすることじゃないし。

 美咲はすぐに参加予定者にメールを送り、出欠の確認を開始した。

   ◇◇

 その日の午後、瀬尾が美咲のデスクにやってきた。

「プロジェクトの打ち上げ……佐伯さんは、参加されるんですか?」

「ああ、それなら……私は、子どもがいるので参加しません」

「そうですよね」

 瀬尾は納得したように少し頷いたが、続けてふと呟くように言った。

「でも、佐伯さんは、僕の分も含めて、このプロジェクトを支援してくれたのに、残念です」

 その言葉に、美咲は思わず手を止めた。
――瀬尾さん、そんなふうに思ってたんだ。

「そう言ってもらえるのは嬉しいです。でも、打ち上げは皆さんで楽しんでください」

 そう返すと、瀬尾は「そうですね」と微笑み、軽く会釈して去っていった。

 美咲はコーヒーをひと口飲みながら、パソコンの画面に視線を戻す。
――プロジェクトの支援……確かに私は裏方だけど、そう思ってもらえたなら、それでいい。

 そう自分に言い聞かせながらも、瀬尾の言葉がほんの少しだけ心に残った。
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