シンママ派遣社員とITコンサルの美味しい関係

第十八話「周りの視線」

 翌日、美咲は学童保育へ大翔を迎えに行った。
 ドアを開けると、大翔はちょうど先生と話をしているところだったが、美咲の姿を見つけると、元気よく駆け寄ってきた。

「ママ!」

「大翔、待たせちゃった?」

「ううん、お兄さんと宿題やった話してたの!」

「お兄さん?」

 美咲が戸惑っていると、隣にいた先生のひとりが微笑みながら話に加わった。

「昨日は珍しく、お父さんがお迎えに来たのね」

「えっ?」

 美咲が驚いていると、もうひとりの先生が首を振りながら訂正した。

「ああ、違いますよ。美咲さんの会社の方らしいです」

「あ、そうなんです。会社の同僚で、昨日はちょっとお願いして……」

 そう説明すると、先生は少し驚いたような顔をして頷いた。

「そうなのね。でも、大翔くん、全然慣れている感じで、親子にしか見えなかったわよ」

「え……」

 美咲は一瞬言葉を失った。

「だって、手をつないで帰って行ったし、大翔くんもすごく自然に甘えてたし……。見ていて、すごく微笑ましかったわ」

「……そうでしたか」

 そう答えながら、美咲の胸の奥に何かが引っかかった。

――親子にしか見えなかった……?

 確かに、大翔は瀬尾に懐いている。
 それは分かっていたつもりだった。

 でも、周りの目には、もうそんなふうに映っているのだ。

 「ママ、お兄さんって算数もすごく上手なんだよ! 」

 大翔が嬉しそうに話すのを聞きながら、美咲は心の中でそっとため息をついた。

――私が思っているより、瀬尾さんはもう私たちの生活に深く関わっているのかもしれない。

 そんなことを考えながら、美咲は「じゃあ、帰ろうか」と大翔の手を取った。

 「またねー!」

 先生たちに手を振る大翔を見ながら、美咲は昨日の夜、瀬尾の部屋で宿題をしていたときの様子を思い出した。

――親子にしか見えなかった……か。

 心のどこかで、その言葉が何度も響いていた。
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