シンママ派遣社員とITコンサルの美味しい関係
第二十二話「私たちの未来」
昼休み。
美咲は会社を出て、待ち合わせ場所のレストランへ向かっていた。
待ち合わせの場所は、駅近くにある落ち着いた雰囲気のレストラン。
ランチタイムで店内は賑わっていたが、瀬尾は予約をしてくれていたようで、すぐに席に案内された。
窓際のテーブル席に座ると、瀬尾が静かに微笑む。
「お誘いいただいて嬉しいです」
「こちらこそ、お時間を取ってくれてありがとうございます」
メニューを開きながら、美咲は少しだけ緊張していた。
――ちゃんと、自分の気持ちを伝えなきゃ。
ランチの注文を済ませ、料理が運ばれてくるまでの間、瀬尾が口を開いた。
「ゆっくり考えたかったですよね。でも、僕のほうがそわそわしてました」
「……そうなんですか?」
「ええ。佐伯さんがどう考えているのか、正直気になっていました」
瀬尾は、テーブルの上のグラスを指でなぞるようにしながら続けた。
「僕は、先日の水族館で言ったことに変わりはありません。佐伯さんと大翔くんと、3人で未来を歩みたいと思っています」
まっすぐな言葉に、美咲の胸が強く締めつけられる。
美咲は、静かに息を整えた。
「……瀬尾さん、あのときすぐに答えられなくてごめんなさい」
「いいんです。簡単に決められることじゃないですから」
「でも、私なりに、ちゃんと考えました」
美咲は、一度視線を落とし、それからゆっくりと瀬尾を見つめた。
「私……もう一度、誰かと人生を歩むなんて考えてもいませんでした。シングルマザーとして、大翔を育てることが最優先で、男性とお付き合いするなんて考える余裕もなかったんです」
「……」
「でも、瀬尾さんと関わるうちに、大翔だけじゃなくて、私自身も支えられていることに気づきました」
瀬尾の目が、ほんのわずかに見開かれる。
「それに、私だけじゃなくて、大翔も……瀬尾さんと一緒にいる時間を、すごく大切にしているんです」
――大翔が「お兄さんとずっと一緒にいたい」と言ったときの顔を、私は忘れられない。
「だから……もしよければ、私と、大翔と、これから一緒にいてくれますか?」
美咲の言葉に、瀬尾の表情が驚きから、ゆっくりと柔らかな笑みに変わる。
「……ありがとうございます」
彼は、静かに、それでも力強く答えた。
「僕は、佐伯さんがこうして向き合ってくれたことが、何より嬉しいです」
そう言いながら、瀬尾はそっと手を伸ばし、美咲の手に優しく触れた。
「これから、一緒に歩んでいきましょう」
その温かさに、美咲は小さく頷いた。
「はい」
ランチが運ばれてくる頃には、美咲の胸の中にあった迷いは、すっかり晴れていた。
新しい未来への第一歩を踏み出す決意とともに――。
美咲は会社を出て、待ち合わせ場所のレストランへ向かっていた。
待ち合わせの場所は、駅近くにある落ち着いた雰囲気のレストラン。
ランチタイムで店内は賑わっていたが、瀬尾は予約をしてくれていたようで、すぐに席に案内された。
窓際のテーブル席に座ると、瀬尾が静かに微笑む。
「お誘いいただいて嬉しいです」
「こちらこそ、お時間を取ってくれてありがとうございます」
メニューを開きながら、美咲は少しだけ緊張していた。
――ちゃんと、自分の気持ちを伝えなきゃ。
ランチの注文を済ませ、料理が運ばれてくるまでの間、瀬尾が口を開いた。
「ゆっくり考えたかったですよね。でも、僕のほうがそわそわしてました」
「……そうなんですか?」
「ええ。佐伯さんがどう考えているのか、正直気になっていました」
瀬尾は、テーブルの上のグラスを指でなぞるようにしながら続けた。
「僕は、先日の水族館で言ったことに変わりはありません。佐伯さんと大翔くんと、3人で未来を歩みたいと思っています」
まっすぐな言葉に、美咲の胸が強く締めつけられる。
美咲は、静かに息を整えた。
「……瀬尾さん、あのときすぐに答えられなくてごめんなさい」
「いいんです。簡単に決められることじゃないですから」
「でも、私なりに、ちゃんと考えました」
美咲は、一度視線を落とし、それからゆっくりと瀬尾を見つめた。
「私……もう一度、誰かと人生を歩むなんて考えてもいませんでした。シングルマザーとして、大翔を育てることが最優先で、男性とお付き合いするなんて考える余裕もなかったんです」
「……」
「でも、瀬尾さんと関わるうちに、大翔だけじゃなくて、私自身も支えられていることに気づきました」
瀬尾の目が、ほんのわずかに見開かれる。
「それに、私だけじゃなくて、大翔も……瀬尾さんと一緒にいる時間を、すごく大切にしているんです」
――大翔が「お兄さんとずっと一緒にいたい」と言ったときの顔を、私は忘れられない。
「だから……もしよければ、私と、大翔と、これから一緒にいてくれますか?」
美咲の言葉に、瀬尾の表情が驚きから、ゆっくりと柔らかな笑みに変わる。
「……ありがとうございます」
彼は、静かに、それでも力強く答えた。
「僕は、佐伯さんがこうして向き合ってくれたことが、何より嬉しいです」
そう言いながら、瀬尾はそっと手を伸ばし、美咲の手に優しく触れた。
「これから、一緒に歩んでいきましょう」
その温かさに、美咲は小さく頷いた。
「はい」
ランチが運ばれてくる頃には、美咲の胸の中にあった迷いは、すっかり晴れていた。
新しい未来への第一歩を踏み出す決意とともに――。