敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「前に、付き合っていた女性との話なんだけど……別れるときに言われたんだ。俺の優しさは残酷だって」

あの日のことを思い出しながら、ゆっくりと話す。

木崎はずっと、黙って聞いてくれていた。
嫌かもしれないのに、真っ直ぐな瞳で、ただ俺の言葉を待ってくれている。

「俺はきっと、木崎のことが好きだ。守りたいと思ったし、一緒にいたいと思った。でも……」

喉が詰まりそうになる。

「“特別な優しさ”を感じさせることはできないかもしれない。木崎も、彼女と同じように苦しむことになってしまうかもしれない」

自分でも驚くほど自然に、心の底から言葉がこぼれた。

「……藤堂さん」

沈黙のあと、木崎がそっと口を開く。

「それって、すごく素敵なことだと思います」
「え？」

顔を上げると、木崎は俺に向かって微笑んでいた。
その笑顔があまりにも優しく綺麗で俺は言葉を失う。

「誰にでも優しい藤堂さんだからこそ、私も助けられたし、そんな藤堂さんを尊敬してます。“特別”じゃなくていいんです。私は、その優しさの一部を分けてもらえるだけで、幸せなんです」

彼女の笑顔は、まるで全てを包み込むような温かさだった。

「私も、藤堂さんが好きです。一緒にいたいです。今の話を聞いて、さらに、大好きになりました」

その瞬間、気づけば俺は彼女の手を取っていた。