いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!

 十二月に入ってすぐ。いつものバーで宇佐美と落ち合った。

「例の件、面白いことが分かったぞ」

 宇佐美がビジネスバッグからファイルを取り出して差し出した。

 麻衣子から、別れを決めた事情を知ってすぐに、宇佐美に藤倉玲人の近況の調査を依頼しておいた。

 麻衣子は既に終わったことと認識しているようだが、裕斗は安心できなかった。

 事故の対応が悪質だったことと、裕斗の同僚の相場の事故の相手も藤倉玲人だったからだ。

 相場は玲人を危険運転の常習犯だと言っていた。そして事故の後始末に家の力を使うことも。

 そんな相手が麻衣子に関わりがあるのは不安でしかない。何かが起きるのを待つよりも、こちらから動いて危険を取り除いておくために、宇佐美に情報を集めて貰ったのだ。

「かなり悪質だよな」

 宇佐美が確認しただけでも、三件の示談の形跡がある。

 交通事故だけではなく、もめ事を起こして相手に怪我をさせているようだ。

 これだけやらかしておいて、大事になっていないのは、親の権力を使って隠していたからだ。

「これ危ないよな。事故の相手が黙っていたから、表ざたになっていないが、玲人以上の権力者や、気が強く声が大きい相手に当たってSNSででも拡散されたら、スキャンダルだ。親に恵まれたうえに悪運が強いな」

「ああ、忌々しいがな」

 裕斗は苛立ちを吐き捨てるように相槌を打つ。

「それで、どうするんだ? このまま放置するつもりはないだろう?」
「もちろんだ。同僚と協力して対応する」
「同僚?」
「彼も藤倉議員の被害者なんだ。示談の予定だったが、麻衣子の件を話したら気が変わったと言って協力することになった」
「世界は狭いと実感するな……そういえば、近々解散総選挙があるみたいだな。藤倉代議士は厳しい戦いになりそうだな。まあ馬鹿な息子を育てた責任があるから自業自得か」

 宇佐美が冷笑する。
 裕斗はグラスを口に運びながら、ファイルをもう一度確認した。
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