いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
仕事では国際会議の準備を進め、相場と協力して藤倉玲人の告発に動く。
休日は麻衣子と子供たちと過ごした。
麻衣子はかなり心を許してくれるようになり、自宅にも招待してくれた。
同居している妹にも挨拶をして、自分も家族の一員になれた。そんな気になっていたとき、子供たちが思いがけないことを言った。
「ひろとくんとなつめせんせいは、どっちがはしるのはやい?」
大樹が走る速さに拘りを持っていることは知っていた。彼の中では走るのが早いイコールかっこいい人になるようだ。
けれど、“なつめせんせい”というワードは初耳だ。
「大樹君、夏目先生って……」
「ぼくは、ひろとくんとなつめせんせいは、どっちがとしうえかきになる」
柚樹までが言い出した。
「なつめ先生って、保育園の先生かな?」
子供たちが接する先生は限られている。
「なつめせんせいは、はるのおいしゃさんなの」
熊のぬいぐるみを大切そうに抱えた小春が言った。
(小春は体が定期的に通院していると言っていたな)
「そうか。小春ちゃんの病院の先生なんだね」
「うん。すごくやさしいの。はる、なつめせんせい、だいすき!」
小春が熊をぎゅっと抱きしめる。その動きが夏目先生への愛情の強さに感じ、裕斗の胸中にもやもやしたものが広がる。
裕斗は小さくため息を吐いてから、努めて笑顔になった。
「夏目先生と会ったことがないんだ。だからどちらが年上かも、走るのが早いかも分からないな。」
「ふーん、そうなんだ」
大樹ががっかりしたように言う。
「……夏目先生はどんな人なのかな?」
「どんなひと?」
「よく家に遊びに来るのかな?」
自分が夏目先生について聞き出そうとしているのは自覚していた。子供に対して何をやっているのだとも思っているが、気になって仕方がない。
すっかり興味を失った様子の大樹に代わり、柚樹が返事をしてくれた。
「ときどきいえにくるよ。えまちゃんともなかよし」
「絵麻さんと? そうか」
どうやら家族ぐるみの仲のようだ。
「ママともなかがいいよ」
「そ、そうか」
続いた柚樹の発言に、裕斗は目元がぴきりとひきつるのを感じた。
「なつめせんせいは、かっこいいの。ママもそういってた」
「……そうか」
小春の無邪気な言葉に、とどめをさされたような気がした。