いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
最愛の家族

 裕斗がスイスから帰国した。

 麻衣子はすぐに会えると思っていたが、しばらく多忙になるとのことで、話し合ができるのはクリスマス前になるとのことだった。

 残念だが仕方がない。麻衣子自身も仕事と子供の行事などが重なり、毎日バタバタしていた。

 そんな中、小春の定期健診の日がやって来た。

 夏目に会うのは、麻衣子の自宅で一緒に夕食を取った日以来だ。

 珍しく小春が体調を崩さなくて、病院に行く機会がなかったのと、夏目から定期的に着ていた様子窺いの電話がなかったからだ。

 だから夏目に会う前は気まずさを感じたけれど、彼はいつも通り笑顔で麻衣子と小春を出迎えてくれた。

「小春ちゃん、こんにちは」
「なつめせんせい、こんにちは」

 小春がぺこりと頭を下げる。

「けんさするんでしょ?」
「ああ、そうだよ。じゃあ向こうの部屋に行こうか」

 彼は小春を連れて、隣の部屋に向かう。麻衣子に向ける視線もいつも通りで、これからも友人として付き合うと言ってくれた彼の気遣いを感じた。

「今回も問題はなかったよ。この調子だと小学校に上がる頃には検査の必要はなくなりそうだ」
「本当?」

 うれしくて、つい大きな声を上げてしまう。

「ああ。期待していいと思う」
「よかった……ありがとう」
「俺は大したことはしてないよ。小春ちゃんが頑張ったからだ」
「そんなことないよ。夏目くんが小春の担当医でよかった。本当に心強く思ってた」

 麻衣子の言葉に、夏目が困ったような微笑を見せる。

「これからも信頼に答えるようにしないとな」

 夏目はそう言うと、麻衣子から目をそらし、電子カルテに素早く入力をした。

「……上手くいっているたいだな」
「あ……うん」

 夏目が言っているのは、裕斗のことだ。小春がいるからはっきり言わないが、裕斗が子供たちと会っているのを、おそらく絵麻から聞いているのだろう。

「麻衣子と小春ちゃんたちが幸せそうでよかった」
「夏目くん……」

 変わらずに接してくれる、彼の優しさがありがたかった。
 夏目との会話は、胸がちくりと痛むものだった。
 絵麻が言っていた通り、彼は麻衣子に好意を持ってくれていたのだろう。
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