いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 顔に傷がついてしまったのは気の毒だし、申し訳ない気持ちもあるが、こちらの都合も考慮してもらえるように交渉しよう。

 そんなことを考えながら、母には留学先の出来事などを話した。

 裕斗のこともさらりと伝えると、母だけでなく絵麻までも驚きの声をあげた。

「お姉ちゃんもついに結婚だね。それまでにお母さんが元気になるといいけど」
「そうね。早くよくなるようにリハビリを頑張るわ」

 久しぶりの家族との会話は穏やかで楽しく、不安を忘れられるひとときだった。
 

 夕食を家の近くのファミリーレストランで済ませて帰宅した。

 片付けと入浴を終えてから、麻衣子は裕斗に電話をかけた。

 ロンドンは昼過ぎだから、休憩中なら出られるだろう。

《はい》

 すぐに柔らかな声が応答した。ヒースロー空港で別れてそれほど時間が経っていないのに、麻衣子の胸中は懐かしさと喜びで満たされる。

「裕斗さん、仕事中にごめんなさい。今話せる?」
「大丈夫だ。連絡を待っていたよ」

 麻衣子に関しては心配性の彼に、帰国したら連絡をするようにと念を押されていた。

 ただ時差があるので、帰国してすぐにはできなかった。

「遅くなってごめんなさい。帰国してすぐに妹と母の病院に行っていたの。帰宅してようやく落ち着いたところ」
「そうか。お母さんは大丈夫なのか?」

 裕斗の声が心配そうなものになった。彼は母と一度も顔を会わせていないというのに、親身になって気遣ってくれる。

「骨折をして手術をしたんだけど、経過は良好でリハビリを頑張るんだって張りきってた」
「それはよかった。事故でメンタルが不安定になって回復が遅れる場合もあるようだから、気がかりだったんだ」
「そんなケースもあるんだ。でも母なら大丈夫なのかな」

 父が亡くなったとき、一時はショックで不安定になったことはあるが、その後は女手一つで麻衣子と絵麻を育ててくれた、根性がある人だ。
 経済的には苦しいことが多かったけれど、悲観的にならず家族三人楽しく暮らしていた。それは母が辛い顔を決して子供に見せなかったからだろう。麻衣子はそんな母を尊敬している。
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