いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 
 裕斗は大学卒業後に外務省に入省して、国内研修を終えた後、二年間の在外英語研修の為に渡米した。研修後に二年間の本省勤務を経て、一年前に在英日本大使館に二等書記官として着任した。

 それから一度も帰国していないので一年ぶりになる。と言っても、空港から自宅までの光景はとくに変わりない。十一月にしては気温が高いと感じたくらいだろうか。

 裕斗は自宅に荷物を置くとそのまま家を出た。麻衣子の実家を訪ねるつもりでいる。

 麻衣子の実家は東京東部の住宅街にある。彼女が帰国する前に、住所を聞いていたのは幸いだった。

 駅から徒歩十五分と聞いていたので、地図アプリで確認しながら進む。

 しばらくすると左手に大きなに行き当たった。

 いつか麻衣子が日本に台風が接近しているというニュースを見ながら顔を曇らせたのを思い出す。

『家の近くの川は、台風が来ると氾濫するかもしれないの。母と妹が心配で……』

 彼女はそわそわした様子で、しばらく台風情報をチェックしていた。

(この川のことだな)

 河川敷が整備されていて、犬の散歩をしていたり、ジョギングをしている人々が行きかっている。今はとても平和な光景に見える。
 周囲に視線を巡らせると、どこか懐かしさを感じる街並みが広がっていた。

 麻衣子はここで育ったのだと思うと、感慨深い。

 立ち止まるのは早々にやめて、裕斗は再び足を進める。

 麻衣子の実家はすぐに見つかった。

 重量鉄骨造りの三階建てマンション。彼女の部屋は一階の角部屋のようだ。

 裕斗は部屋番号を再確認してから、部屋に向かう。

 彼女は裕斗の顔を見て、どんな反応をするだろう。

 事前連絡はしていない。気が付けば麻衣子の番号が変わっていて、連絡が取れなかったからだ。

 彼女は迷惑がるだろうか。なぜ来たのかと不愉快な顔をされたら……頭の中では後ろ向きな考えでいっぱいになる。もし不在だったら手紙を残して出直そう。

 期待と不安を抱えながら、麻衣子の部屋のインターフォンを鳴らす。

 しかし部屋から出て来たのは、怪訝そうな顔をした男性だった。
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