いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!

「園芸に関心があるならイギリスは最適かもしれない。イングリッシュガーデンツアーには参加しましたか?」
「いえ、参加したいと思っているんですが、授業で見学できるところがあるみたいなのでもう少し様子を見てから……」

 初めは緊張して声が出ないくらいだったのに、裕斗が聞き上手だからか、思いのほか会話がスムーズに進み、緊張が解けて口数が増えていった。初対面でありながら自分のことを語ってしまうくらいに。

「高校を卒業後、花屋に就職したんです。学校に求人が来ていたものの中から、お給料や通勤時間などの条件で選んだんですけど、働いているうちに花や園芸にについてもっと勉強してみたくなりました。せっかくなら本場で学んでみたいと思って留学を」

 麻衣子の話を聞いていた裕斗の表情が僅かに変化した。興味深そうな眼差しを麻衣子に向けている。

「働きながら留学準備を? それは大変だっただろう」
「そうですね……私の場合は英語の勉強も必要だったから睡眠時間を削ったりしていました。でも夢を叶えるためなので、大変さよりもやる気が勝っていて楽しかったです」
「雨村さんは前向きなんですね」

 裕斗の目に優しさが滲んだ。彼が纏う雰囲気が柔らかくなるのを感じる。

「勉強は楽しいですか?」
「はい。それに一日を知識と技術を吸収することだけに使えるのは本当に贅沢なことだと実感しています。切磋琢磨できるクラスメイトがいて、イギリスに来て本当によかったと思います」

 笑顔で答えると、裕斗もつられたのか美しく笑った。

「あの、羽澄さんは外務省の職員だそうですけど、大使館で働いていらっしゃるんですか?」
「ああ。外交官としてね」
「外交官……エリートなんですね」

 裕斗がくすりと笑った。

「エリートかは分からないが、誇りを持って仕事をしているよ」 

 裕斗の声音から、言葉の通りの仕事に対する自負心が伝わってきて、麻衣子は思わず目を瞠った。自分の仕事について、こんなふうに語る人と接するのは初めてだったのだ。 
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