いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 失敗したのが分かるのか、小春がしょんぼりとした様子で俯いている。

「大丈夫だよ。でも今度小春のエプロンを用意しようね」
「エプロン……えまちゃんとお揃いがいいな」

 小春がぱっと顔を輝かせる。ママと一緒と言って貰えなかったことに、少しがっかりしながらも幼い娘の機嫌が直ったようなのでよかったこととした。

 陽が落ちて暗くなった頃、夏目と子供たちが帰って来た。

 目いっぱい遊んで満足したのか、大樹も柚樹もご機嫌だ。

「楽しかった?」

 テーブルに料理を並べながら聞いてみる。

「うん。なつめせんせいに、はやいはしりかた、おしえてもらって、めちゃくちゃはやくなった」

 大樹が胸を張って言う。

「ぼくは、バスケをおしえてもらったよ」

 柚樹も珍しくテンションが上がっている。

「ふたりとも、よかったね」

 麻衣子もできるだけ外に連れ出すようにしている、スポーツを教えるのは苦手だ。

 夏目に教わりながら遊べて楽しかったのだろう。

(夏目君は昔から運動神経抜群だったものね)

「夏目くん、ありがとうね」

 感謝の気持ちを込めて、夏目を見つめる。

「あ、ああ……」

 彼はなぜか動揺したように、目をそらしてしまった。

「夏目君、どうかした?」
「いや、なんでもないよ」

 怪訝に感じたところで、明るい絵麻の声が響いた。

「パイが焼きあがったよー! さあ、みんなで食べよう」

 ほかほかと湯気を立てるミートパイがテーブルの真ん中にどんと置かれる。

「うわあ、うまそー!」

 大樹の目がミートパイにくぎ付けだ。

「これ、はるがつくったの!」

 小さなチョコパイを指差し小春がアピールする。

「はる、じょうずだね」

 柚樹が淡々と感想を述べた。

 それぞれ席に着き、賑やかな食事をはじめる。

 子供たちの世話に追われて、先ほどの夏目の違和感はいつの間にか頭から消えていた。

 絵麻の絶品料理を食べて満足した後は、コーヒーでも飲んでゆっくりしたい気持ちをぐっと堪えて、子供たちをお風呂に入れた。

 早めに寝る支度をしていないと、急に糸が切れたようにことりと眠ってしまうのだ。

 とくに今日はいつもと違う行動をしたからか、三人とも九時前にぐっすり眠ってしまった。

 三人で寝室に運び、布団に並べる。

「ぐっすり眠っているな」

 夏目が声を潜めて言う。子供たちを見る目はとても優しい。
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