いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
「知ってる? 寝顔はなぜか三人とも似ているんだよ」
「本当だな」

 絵麻の笑いを含んだ声に、夏目が頷く。

 ぷくっと膨らんだ頬に、丸くて広い額。つるりとした肌。気持ちよさそうにときどき動く口元。確かに起きているときよりも、共通点がある。

 起こさないようにそっと部屋を出てリビングに戻る。

 子供がいないと、とても静かだ。

「私、キッチンの片づけをしてくるよ」
「私がやるから絵麻は休んでいて」
「お姉ちゃんは夏目先生と話があるでしょ? はるのこと相談したいって言ってたじゃない」

 絵麻はそう言うと、さっさとキッチンに入ってしまった。

 ふたりで残されて、麻衣子はなぜか気まずさを感じた。

「小春ちゃんになにかあったのか?」

 夏目が心配そうに言う。真剣な医師としての目をしているのを見てほっとする。

「あ……うん。今度保育園でマラソン大会があるんだけど、小春の参加をどうしようかと思って」

 小春は心臓の定期健診を受けているけれど、基本的には普通の子供と同じように生活を遅れている。ただマラソン大会は初めての経験だし、普段よりも体力を使いそうだから、念のため医師に相談したかったのだ。

「マラソンか……小春ちゃんは参加したがっているのか?」

 麻衣子は頷いた。

「大樹と柚樹が参加するから、自分も当然参加すると思ってるの」
「その行事、麻衣子は見にいくのか?」
「うん」
「それなら参加する方向にして、当日の体調が悪かったり、途中で様子がおかしいと感じたら麻衣子の判断で中断すればいい。心配なのは分かるが、小春ちゃんはもう普通の子と同様に過ごして大丈夫だ。過保護すぎるのもよくない。麻衣子は小春ちゃんにも大樹君と
柚樹君と同じ経験をしてほしいと思ってるんだろ? その考えでいいと思う」
「そうだね……ありがとう、元気づけられた。夏目君の言う通りにする」
「あ、ああ……」

 笑顔でお礼を言うと、夏目がどこか気まずそうに目をそらした。

 なんとなく言葉が続けられなくなり沈黙になる。
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