異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

5.落ち着くところに落ち着いて

「私は一体なんのために連れて来られたんでしょうか……」

 深い紺色の髪と瞳の彼女の印象は、全体的に暗い。しかし、プロポーションが抜群だ。胸がめちゃくちゃ大きいだけに、その暗さすら色気に加味されている。女性にしては低めの少しハスキーな声も色っぽく、チェルシーとは対照的だ。

 中庭のテラスで複数のご令嬢と一緒にいた彼女を連れてきた。ただ来てと頼んでは、王子が二人も後ろにいるというメンバーだけに周りの子たちにあとで色々と聞かれてしまう。「チェルシーさんがあなたと少しお話がしたいらしいの。来ていただけるかしら」と、これまた無難な嘘をつかせてもらった。私たちはただの仲介者ですといった形だ。

 そして、ここに来て内容を尋ねるブレンダの言葉に「お話ししたいことは何もないですね」とチェルシーが言った結果が、さっきの言葉に繋がっている。

「ごめんなさいね。お話ししたいのはチェルシーさんではなく私だったのよ。あとのことを考えて彼女の名前を使わせてもらったわ」
「あとの……こと……」
「どんな話だったのかと他の方に聞かれても困るでしょう? 私たちが相手となると興味も引いてしまうわ」
「……困るようなお話をされるのでしょうか」
「いえ。ここでたまに私たちのお茶会に参加していただけないかしらというお願いよ。他のお嬢様たちには内緒でね。私たちのお気に入りだと他の方に思われては嫉妬もされやすいし、しつこく内容を誰かに聞かれる可能性もあるわ」
「え……」

 微妙な顔をしている。どういうことか思案しているのかな。

「本日の茶葉はベルグラのウルズが産地のキャメラントルフナのフラワリーペコーでございます。お口に合うとよろしいのですか」

 使用人さんが、さらりとお茶会に参加しなければならない雰囲気にしてくれる。聞き慣れない茶葉だ。知らない味でもあったし、この世界だけの紅茶なのかもしれない。

「まぁ、座りなよ」

 レヴィアスの言葉に、ブレンダも戸惑いながら私の隣へ座る。大きな丸テーブルで、チェルシーの両隣にはハワードとアーロン。アーロンの隣がレヴィアスでその隣が私。つまりブレンダは私とハワードに挟まれる位置だ。
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