まだ誰も知らない恋を始めよう
「だったら、一族での扱いを愚痴ったのは?」

「確かに不満はあるだろうけど、血が繋がっていないのは事実なんだし、本人だって分かっているのを、酒を飲んで愚痴っただけだろ」

「フィニアスの噂を、ステラに広めさせたのは?」

「気を許した恋人になら、口も軽くなる。
 それを、ステラがお前に教えただけとか?」


 兄とわたしの会話を聞きながら、堪えきれないようにフィニアスが泣きそうな表情で笑い出した。


「あいつが……そうだ、内勤はロジャーの希望だって聞いてたのに……」

 それは従兄が自分を憎んでいたのではない可能性が出てきた安堵からと、身内を疑ってしまった自分を嗤わずにはいられないように見えて。 
 フィニアスが罪悪感を抱えるのは、半分以上わたしのせいでもあるから、落ち込む姿を見るのが辛い。
 自分の能力を過信して、まだ会った事も無い彼の従兄を賢しげに怪しんだのはわたしだ。
 
 フィニアスとロジャーを比べて、妬むのは無理もないと憐れんだ。
 その上、ステラを騙して利用しようとしているのではなんて疑って、ステラに対しても失礼だった……
 
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