まだ誰も知らない恋を始めよう
 まさか彼が見えてるのだろうか?
 ここでは聞けないので、わたしは頷くだけにした。


「……そう、いいわ、入って。
 ジェラルディン嬢の紹介なら、余程のことね?」

「ありがとうございます!」と。
 わたしとフィニアスの声が揃った。


   ◇◇◇

 
 ヴィオン教官に先導されて、魔法学院の内部に入る。
 ドキドキが止まらない。
 ここはわたしの憧れの魔法庁管轄の魔法学院。
 一般の人は決して入れない。
 抑えようと思っても、つい視線はあちらこちらに飛ぶ。

 この時間は授業中なのか、魔法士予備軍の若者達の姿は見えないが、校舎からも校庭からも物音ひとつ聞こえない。


「授業内容は異なりますが、施設は普通の学校と変わり無いです。
 静かなのは、全体に防音と結界魔法を掛けているからですよ。
 血の気の多いガキどもが大勢集まってますからね、時には争っての魔力の暴発騒ぎもあって、実際はうるさいし、危険です。
 マーロウさんは、魔法にご興味がありそうですね?」

 前を向いたまま言われて。
 ヴィオン教官は後頭部にも目があって、わたしが物珍しげにキョロキョロしていたことが見え、且つ考えも読めるのか、と驚いた。
 この人からは、あの身分証が偽物だとバレている気もして。

 底知れなさに、ちょっとゾクッとした。

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