まだ誰も知らない恋を始めよう
 ベッキーさんは挨拶無しに、いきなり本題に入るのを良しとされる方なのだろう。
 ご本人もズバリとフィニアスの事を、そちらの方と仰った。
 やはり、一流の魔法士にはフィニアスが見えるんだ。


 テンションの上がったわたしは、気付いていなかった。
 家名を言わなかったのに、ベッキーさんからマッカーシーと呼ばれ、はいと答えてしまった事を。


「お、俺、いや、私が見えるんですか!」

 わたしと兄以外の人から自分の姿が見えることに、興奮したフィニアスが弾んだ声をあげて、立ち上がったが。
 残念ながらその声はベッキーさんにも聞こえないのか、彼女は彼を見ることは無い……


「そうですか、彼と仰るからには男性なんですね。
 見えてはいないんです、何かが居るのを感じたと言いますか。
 今、彼はどうされています?」


 フィニアスは期待して喜んだ反動で、力が抜けたようにまた座り込んだので、彼の肩を擦って
「でも、感じてくれたんだよ? 誰も気付いてくれなかったのに」と慰めた。


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