まだ誰も知らない恋を始めよう
「ディナの知人て言うのは嘘じゃないね。
 貴女からは彼女の香りが、微かだけどしてるし。
 昨日じゃないね、一昨日の土曜日に会った感じかな。
 で、お隣の若いお兄さんからは黒魔法の臭いがぷんぷんしてる。
 ねぇ、もう俺の前で抱き合っていちゃつくのはやめて、離れてくれない?
 いたいけな青少年には、目の毒なんだからさー」


 フィニアスの腕は、年下の少年にからかわれても、離されることは無く、却ってきつく抱きしめられた。
 そのうえで、彼は知り合ってから何度聞いたか分からない、お馴染みの台詞を口にした。


「君には、俺が見えるの?」と。


  ◇◇◇


 残念ながら、少年もまたフィニアスの言葉に耳を傾けることはなかった。
 これはベッキーさんと同じで、彼の気配を感じてるだけ?
 でも、彼はフィニアスが若い男性で、黒魔法の臭いがすると言い当てた。


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