まだ誰も知らない恋を始めよう
  ◇◇◇


 魔法学院近くのバス停で、セントラル行きのバスを待っている。
 正午過ぎのバス停は、わたし達2人しか居なくて、普通に会話が出来た。


 あの魔法学院の、あの美しい2人。
 便宜上、養子縁組をしたようにベッキーさんは説明されていたけれど。
 髪色も瞳の色も違う2人なのに、纏う雰囲気は同じだった。
 

 圧倒的な魔力を持つ彼等からは、湧き出てくる自信のようなものを感じて、自然と緊張して。
 その反動で、ニール・コーリングの話題で盛り上がった後のことだ。


 まだ、その笑いが完全に治まっていないのに。
 フィニアスが、わたしを見て。
 その眼差しに、胸がざわめいた。


 よくない予感は当たりやすいと、わたしだって聞いた事がある。
 貴方のお気に入りのバスを待っているのに、ここで言うことじゃない。
 やめて、何も言わないで、このまま笑ってて、と切実に思った。


「あのさ、俺、考えたんだけど」


 分かってる、分かってるから言わないで。
 そんなに優しい顔で言わないで。
 わたしは彼に願った。

 
「このまま君に迷惑を掛けられない、だから……」


 何なの、どうして悪い予感は当たるの。
 迷惑なんかじゃない、と言いたいのに。
 何も言えないわたしは、彼に願った。
 
 もう、これ以上、聞かせないで、と。

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