まだ誰も知らない恋を始めよう

6 外見最高、中身残念な彼

 フィニアス・ペンデルトンの言ってることは、まともじゃない。
 もしかして裕福な大学生に流行り始めた危ないクスリを常用してて、妄想が始まっているのだろうか……それとも。

 わたしに向かって笑顔を見せるフィンに、別パターンを思い当てた。
 きっと、絶対にこれだ!


「中庭に居る全員が協力者?
 もしかしたら、ステラも仲間なの?
 その貴方達の悪戯か、ゲームかは分からないけど、中庭まで付いてきたのは、わたしで何人目?」

「……もしかして君は、僕が皆を巻き込んで君を騙してる、と言いたいの?
 そんなことして、何の得が?」

 確かに、一見何の得にもならないけれど。
 今日は学期途中の長い休みの前だから、普段から楽しく毎日過ごしているだろうフィンだって気分が盛り上がって浮かれて、地味女が舞い上がる様子を皆で笑おうとして、とか……


「あのさ、初めて会ったのに抱きついた僕を信用出来ないと思うけど。
 それが面白いから、の理由で誰かを笑い者にするなんて、僕はしない。
 それだけは神に誓える。
 それにダニエルには信じて貰いたいから、これから君の友人に会う。
 恐らく彼女には僕が見えないと思うから、君を騙しているのかは、友人の反応を見て判断して欲しい」


 笑顔を消して、真面目な顔で訴えるフィンを見て、仕方なくわたしは頷いた。
 仕方なく、だ。
 神に誓ってまで否定する人に、あーだこーだ続けたって、平行線だもの。
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