まだ誰も知らない恋を始めよう

36 甘ちゃん気質が抜けない俺

 俺の恋人のふりをする、とダニエルが言い出した。

『愛があるから、彼女だけが俺が見える』ことにするからだけど……

 それを理由にしたら、母辺りは
「わたしだってフィンに愛があるのに、どうして見えないの!」なんてややこしい事を言い出すのではないか、と考えてしまった。
 だけど、それも一瞬だった。

 せっかくダニエルが『恋人』として、両親に自己紹介してくれるのなら、俺は余計なことを言うのは止めた。


 さっきまで、もうここから先はダニエルには迷惑をかけられないと思い、自力では何も出来ない俺なんかは何処かへ行ってしまった方がいいな、と彼女にさよならを言ったのに。

 彼女の方から、自宅に戻れるように両親に事情を話すと言われて、単純な俺でも少し複雑だったけど、それに乗らせて貰うことにした。


 男のくせに、直ぐに考えが変わる奴だと自分でも呆れるけど……
 基本的に俺は人に頼る甘ちゃん気質が抜けない。


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