まだ誰も知らない恋を始めよう
ベテランのビリーは門番だが、邸内の使用人達とも仲が良い。
指輪の実物は見たことが無くても、話には聞いていたのだろう。
その後ろ姿を見送って、それまでしっかりしていたダニエルがよろめいたので、背後から彼女の両肩を支えた。
「わたし……貴方のご実家まで来るなんて、ちょっと……早まったかも。
鷲の彫刻は気に入ったけど、警備の人も、魔法学院より怖い、って」
「今は俺の恋人なんだから、そんなこと言わないで。
俺が側に居るから」
俺はダニエルの手を改めて握り直した。
いわゆる、恋人繋ぎに。
◇◇◇
俺達2人の目の前には、母が座っている。
その後ろには母が実家から連れてきた専属侍女のグレンダが当然のように立っていた。
グレンダは母の乳母の娘で、嫁入り時にペンデルトンに付いてきて、40年以上母の背後を守っている。
この場に叔母のカレラが居ないことに、俺は安堵した。
カレラは父の妹で、その結婚相手がロジャーの父だ。
叔母は俺が行方不明になって寝込んでしまった母の面倒を見る、という理由で先週火曜日の夜からウチに泊まり込んでいた。
裕福だとは言え、平民の父と貴族令嬢の母の結婚は、女子学院で母の同級生だった叔母が取り持ったからで、未だに叔母は友人だった母に口出しを止めない。
そんな口うるさい叔母がこの場に立ち会っていないのは、帰ったんだろうな。
俺と叔母ははっきり言って相性が悪い。
あの人はダニエルにも何言うか分からないし、物事をややこしくするだけだから居ない方がいい。
指輪の実物は見たことが無くても、話には聞いていたのだろう。
その後ろ姿を見送って、それまでしっかりしていたダニエルがよろめいたので、背後から彼女の両肩を支えた。
「わたし……貴方のご実家まで来るなんて、ちょっと……早まったかも。
鷲の彫刻は気に入ったけど、警備の人も、魔法学院より怖い、って」
「今は俺の恋人なんだから、そんなこと言わないで。
俺が側に居るから」
俺はダニエルの手を改めて握り直した。
いわゆる、恋人繋ぎに。
◇◇◇
俺達2人の目の前には、母が座っている。
その後ろには母が実家から連れてきた専属侍女のグレンダが当然のように立っていた。
グレンダは母の乳母の娘で、嫁入り時にペンデルトンに付いてきて、40年以上母の背後を守っている。
この場に叔母のカレラが居ないことに、俺は安堵した。
カレラは父の妹で、その結婚相手がロジャーの父だ。
叔母は俺が行方不明になって寝込んでしまった母の面倒を見る、という理由で先週火曜日の夜からウチに泊まり込んでいた。
裕福だとは言え、平民の父と貴族令嬢の母の結婚は、女子学院で母の同級生だった叔母が取り持ったからで、未だに叔母は友人だった母に口出しを止めない。
そんな口うるさい叔母がこの場に立ち会っていないのは、帰ったんだろうな。
俺と叔母ははっきり言って相性が悪い。
あの人はダニエルにも何言うか分からないし、物事をややこしくするだけだから居ない方がいい。