まだ誰も知らない恋を始めよう

42 後輩女子に言い切られたわたし

 まだ高等学院生のジェラルディンは月に3回、第1以外の土曜日のみシーズンズで働いている。

 彼女に紹介して貰った魔法学院訪問の報告は土曜日にしよう、と思っていたのに。


 お店に到着して、お馴染みの眼鏡を掛けて制服に着替えて、休憩室に移動したら。
 お休みのはずのジェリーが高等学院の制服で、いつものように、いつものソファーに座って過去問を解いていた。
 平日に彼女の顔を見るのは、初めてだ。


「お疲れ様です、ジェリーは今日はお休みだよね?」

「お疲れ様です。
 はい、お休みなんですけど」

 誰が始めたのか分からないけれど、出勤時だろうが、退勤時だろうが、顔を合わせた時の挨拶は、開口一番『お疲れ様です』だ。
 店からの強制では無いのに、シーズンズ内のお決まり事みたいになっている。


「月曜にあそこに行く、って言ってたでしょう?
 わたし、今週土曜は模試でシフトに入っていないので、どうだったか、ダニエルさんの入り前に聞けたらなぁ、と寮に戻らずにそのまま来ちゃいました」


 あそこ、とは魔法学院の事で。
 どうだったか、はあの子の事か。
 そう生温かい目で見てしまうのは、ちょっといやらしいかな。

 オルくん、『嫁のこと、よろしく』って言ってたよ、と教えたら、年齢の割に落ち着いているジェリーは、どんな照れ顔を見せるのだろう。


「おかげさまで、最初は取り次いで貰えなかったのに、貴女の名前を出したら、あっという間に中に入れて貰えたの。
 それでレベッカ・ヴィオン教官と。
 オルシアナス・ヴィオンくんに会えました」

「……そうですか、オルにも会えたんですね」


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