まだ誰も知らない恋を始めよう
   ◇◇◇


 わたしとフィンのこれまでの経緯を、ジェリーはずっと黙って聞いてくれていた。
 マッカーシーの力について話しても、黙って頷くだけだ。
 
 やはり婚約者のオルくんが魔力持ちだから、そういうのを受け入れやすいのかもしれない。


 そしてわたしは、ロッカーにバッグを取りに行き、オルくんが別れ際にベッキーさんの目を盗むようにして手渡してきた紙片を取り出して、ジェリーに見せた。
 この紙片は、フィンにも見せていない。


「わたし達が帰る前に、オルくんが少し席を外したの。
 これを取りに行ってたんだと思う。
 わたしに握手するふりをして、これを使え、って小さな声で言われたの」

 本当は言葉で言われたのではなくて、彼は自分の心の中を、わたしに読み取らせたんだけど。
 オルくんが伝えてきたのは他にもあるけれど、それは今ジェリーには言えない。



< 169 / 289 >

この作品をシェア

pagetop