まだ誰も知らない恋を始めよう

7 超常現象は専門外のわたし

 その可能性を考えて、ぞっとしたわたしの肩を、早く聞けとばかりにフィンがつつく。


「あの……さっきのフィニアス・ペンデルトンの話だけど。
 ……ステラは彼と親しかったの?」

「んー、会えば話をするくらいだけどね。
 学部は違うけど、フィニアスとは友達だから」

 その答えを聞いたフィンは、またわたしの耳元に顔を寄せて囁いた。


「嘘だよ、今日初めて、この人に会ったんだ。
 本人を目の前にして、どうして嘘をつくんだろうね?
 僕の友人達は皆、僕をフィニアスではなくフィンと呼ぶ」

「……」


 わたしはフィンにもステラにも、何と言えばいいのか分からなくて。
 残したままの食べていなかったハムサンドを無意識に手に取った。
 サラダしか食べていなかったから空腹のはずなのに、美味しくない。


 もそもそと食べ始めたわたしに、一瞬の優しい表情を見せて。
 可愛い嘘をつくステラが立ち上がった。
 
 
「そろそろ、わたし行くね。
 まだ時間残ってるから、昼食はちゃんと残さず食べなきゃ、駄目よ?
 じゃあ、休み明けにまた会おうね」

「あ、うん……ステラも連休楽しんで。
 荷物を見ててくれてありがとね」

 何も知らないステラは手を振って、わたしと(見えない)フィンを置いて行ってしまった。
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