まだ誰も知らない恋を始めよう
「アイリーンとメイトリクスが繋がってるなら、GOサインが出たら、そいつを最優先に追うように親父だって動いてくれる。
 無事に捕まえたら、外れ本人に解術させる。
 そしたら、あいつは元に戻れるんだろ。
 どうして、それを待てない?
 アリア叔母さんまで巻き込む必要は無いだろ?
 あいつらの逮捕まで待たせるのはフィニアスには気の毒だが、待てば解決出来る案件だ。
 そうなるよう、お兄ちゃんはもっともっと頑張る」
 

 もっともっと頑張る、と言ってくれる兄から見たら、その通りだ。


 フィンの姿は見えないままだけれど、ご両親は彼の状況を受け入れた。

 知り合ったばかりの彼は表面上は軽薄とも言える位の調子で、衣食住の心配も無く、それなりに毎日は過ごせているように話してくれたけれど。
 それは一時の事だと耐えられるが、長くは続けられない綱渡りのように思えた。

 そんな状況から抜け出せたのだし、術者の黒魔法士の名前まで判明して、これから先の展開を気長に待てばいいだけ、と事態は好転してるように見えているだろうけれど。


 わたしは教えられたの、別れ際にオルくんに。


 彼はわたしにメイトリクスのノートの切れ端を握らせながら、心に思いを浮かべて伝えてきた。


『あんた読めるんだろ、これを使え、早くしないと、お兄さんの命がヤバいかも』と。

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