まだ誰も知らない恋を始めよう
 整理券配布列の最後尾に並び、わたしに気付いて微笑む早番の行列係から整理券を受け取った。
 入店まで時間がある32番なので、一旦お店から離れ、先に近くの電話ボックスから叔母に電話を掛ける事にした。
 この時間なら、叔母は朝昼食兼用のブランチ後で、まったりしているはず。


 メイフラワー通り1027番地、プロムコートと電話交換手に住所とフラットの名称を告げる。
 プロムコート201号室に、叔母は1人で住んでいる。
 
 どういった話の流れで、叔母の助力を請えば良いか、まだ決めてなかった。
 それでも、久しぶりに会いたいです、は騙し討ちみたいになるから絶対にしちゃ駄目で、何故会いたいのかの目的は先に電話で言わないと、とは考えていた。
 それで断られたら、潔く諦めるのだけは決めている。


 電話に出た大家さんに、叔母の部屋番号、わたしの名前、関係性を告げて呼び出して貰ったが、待っている間は心臓がバクバクしていた。


 もうすぐ電話口に叔母が出る。
 まだ作戦が固まっていないのに。
 受話器を持つ手に力が入る。
 どうする、どうする、何て言う?


『お久し振りね、ダニ……』

 待ち焦がれた懐かしい叔母の声が聞こえた途端に、焦ったわたしは口にしていた。


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