まだ誰も知らない恋を始めよう
「叔母様の力は何ですか? これから買うんですが 、今でも蜂蜜とベリーはお好きですか!? 是非、お力を貸してください! 会って話を聞いてくれますか?」

『……は? 蜂蜜もベリーも、好きだけど。
 いいわ、いらっしゃい』

 挨拶も前置きも無しに、勝手に言葉が一気に口から出ていた。


   ◇◇◇


「ダニエルって。昔からそういう子だったわ」

「……成長してなくて、すみません」

 聞いて欲しい話があれば、順序関係無く話し出す子だった……とお茶を淹れてくれながら、叔母は笑った。

 招いて貰った叔母の部屋は、住む人の性格と同じように温かで居心地が良い。
 9年ぶりの再会は涙と抱擁で始まり、今は少し落ち着いて、わたしの成長の無さを笑われているところだ。


 そうして和やかにお互いの現状報告をし、手渡した兄からの手紙も読み終わったところで、表情を改めた叔母が指先でティーカップの縁をぐるりと1周させた。


「そろそろ本題に入りましょうか。
 力を貸せるかどうかは、話を聞いてからしか答えられないけれど、それでいいわね?
 わたしの『マッカーシーの力』は、『悪意を嗅ぐ力』なの」

 やはり、叔母にも悪意に特化した能力があったんだ。
 だけど嗅ぐ力、って一体どんな?


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